KART ACTIVITY DIARY

- 2012年9月の日記 -
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2012年9月26日(水)  2012年度活動総括
2012年9月26日(水)の画像
 ※最終報告書より抜粋



「2ヵ年計画」を経た2012年度の活動は,盤石なチーム体制・高度な車両開発能力・静的審査のノウハウが揃った恵まれた状態からのスタートでした.昨年度逃した総合優勝を目指し,メンバー全員で作り上げた車両KZ-RR10は構想時に描いた通りの高い車両性能を備え,その美麗な仕上がりと相まって,審査員の皆様をはじめ,多くの方々より好評をいただくことができました.静的審査でも,コスト4位・デザイン3位・プレゼン3位と,頂点こそ掴めませんでしたがどの審査も確実に高得点を獲得することができる技術が身についたことを示す成果を上げることができました.
しかし,最終的にはエンデュランスにおいて,エンジントラブルによるリタイアを喫し,悲願の総合優勝をあと一歩のところで逃すという,昨年度の悪夢を繰り返す結末を迎えてしまいました.私的な視点からではありますが,この場を借りてこの1年を総括し,来年度に向けての反省点を洗い出したいと思います.

1年前にチームが発足した際,主要メンバーは4回生を含めても8人という,全国的に見ても小規模で,強豪校と比べれば半数以下という非常に少ない状態でした.「2ヵ年計画」を経てチームの結束力は高い状態で維持されていたものの,誰ひとりとして欠けてはならないという綱渡りの状態にありました.少人数でのチーム構成となると,必然的に個人個人が広範な個所を担当することとなります.幸いにして個人の持つ高い能力が発揮され,車両作りにおいて深刻な問題に見舞われることはありませんでしたが,昨年度までのトップダウン形式での指示系統を私自身が崩壊させてしまいました.チームの組織としては昨年度同様,メンバー・班リーダー・車両統括者・チームリーダーという構図こそありましたが,メンバーの少なさゆえに班リーダーが形骸化し,車両統括者がメンバー全員の担当の進捗を直接確認するという事態になっており,加えてチームリーダーと車両統括者の連携が十分とは言えず,車両統括者が課題をひとりで抱え込むという事態がしばしば起こりました.『メンバーの意思を最大限尊重する』という自分自身の甘言により,チームへの指示を疎かにしてしまったことをリーダーとして深く自戒しております.チーム全体のまとまりはあれども,内部の指示系統は無くなり,最終的には連携のとれたチームではなく単なるスペシャリストの集まりに成り下がらせてしまったことが今年度を振り返って私自身が大いに反省すべき点のひとつでした.
車両開発のスケジュールでは,今年度は車両の製作開始を例年より1ヶ月遅らせて12月としました.昨年度はフルモデルチェンジということもあり,製作時の問題を見越しての早期の製作開始でしたが,今年度は見切り発車での製作を排除し,より詳細に設計の検討を行うべく,1ヶ月設計期間を延ばしました.この1ヶ月の延長が本当に必要だったかはチーム内でも判断の分かれるところですが,今年度の目玉であるフレームのバルクヘッド構造の設計もこの1ヶ月間で熟成されたことを鑑みれば,個人的には成果があったと考えております.製作に入ってからは「2ヵ年計画」で確立されたスケジュールを踏襲していった結果,無事に3月中のシェイクダウンを達成することができました.ただ,当初は7月上旬の搭載予定であったカウルの搭載が1ヶ月近く遅れて信頼性の検証が不十分だったことや,製作開始後も結局は設計に手が加えられてしまうといったお粗末な車両開発からは,そろそろ脱却すべき時期に来ていることを自覚しなくてはなりません.
また今年度は,昨年度のトラブルの反省を生かして設計ができたことで,試走によって起こる致命的なトラブルを減らすことができました.昨年度は強度不足が問題となったハブやドライブトレイン周辺は,今年度トラブルフリーで過ごすことができ,走行距離を昨年以上に稼ぐことができたと考えております.ただ全くトラブルがなかったというわけではなく,今年度新しく取り入れたエンジンのボアアップや電動ウォーターポンプに起因するエンジン・電装系統のトラブルは常に悩みの種でもありました.その都度,解決を担当者と車両統括者で行ってきましたが,これら小さなトラブルの奥に潜んでいた“元凶”はついに見つけることができず,表面上はトラブルを全て解決したかに見える状態で車両を大会へと送り込んでしまったことに後悔の念は禁じ得ません.発生した問題ひとつひとつに対する解決の仕方は適切だったかもしれませんが,より深くまで洞察し,例え目には見えない些細なものでもリタイアの元凶となるような危険因子は徹底的に排除しようとする,完走への貪欲な姿勢が私達には足りていなかったのではないかと,2年連続のリタイアを以て痛感しております.
1度ならず2度までもエンデュランスのリタイアで大きなチャンスを逃してしまったことに,大きな危機感を抱かなくてはなりません.私達に決定的に欠落している何かがあったから,現状に至ってしまったのです.チームの能力としては,総合優勝が狙えるものを持っていることはこの2年間が証明しました.だからこそ,安心して車両を走りきらせる,その単純な課題を満たすために今一度私達は考える必要があります.来年度,これを最初の課題として,取り組んでゆきたいと思っております.
 
以上,批判的な意見ばかり並べましたが,今年度車両KZ-RR10と,それを作り上げたKARTというチームを私は誇りに思っています.チーム発足当初のメンバーは誰ひとりとして欠けることなく大会に臨み,新たに3人の仲間を加えることができました.総合23位という,結果だけ見ればKART史上最低の結果ではありますが,そこに至る過程において勝つための更なるノウハウをKARTはメンバーひとりひとりの中に確かに蓄積しました.今の軌道を保ち続ければ,総合優勝の地に立つ時は必ずや訪れると信じております.

最後になりますが,私達KARTの活動は支えてくださっておられる皆様のご理解の上に成り立っております.応援して頂いたスポンサー様,サポーター様,工場技術職員の方々,先生方,メンバーのご家族にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます.皆様からは温かいご支援やご声援を頂き,また,激励の言葉に励まされた事は一度や二度ではありませんでした.皆様のご協力なしには,総合優勝を争うことはおろか,この活動を続けることすらできませんでした.メンバー一同本当に貴重な経験をさせて頂いていると改めて実感しております.1年間,本当にありがとうございました.
そして,結果を残すことが出来なかったプロジェクトリーダーに残された最後の仕事として,後に続くチームに少しでも良い環境を残してやらねばなりません.もう一度,KARTに挑戦の機会をください.何卒,今後とも京都大学フォーミュラプロジェクトKARTをよろしくお願い申し上げます.


2012年度プロジェクトリーダー 小川 貴臣