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COLLABORATION!

 京都大学のカウル



 京都大学のカウル(外装)は例年高い評価を頂いています。というのも、扱いの難しいドライカーボンで複雑な形状を作り上げているからなのです。ドライカーボンとは、通常よく目にするウェットカーボンとは比べものにならない程の剛性を持たせつつも軽量にすることができるという利点がある一方で、扱いが非常に難しく製作時には特別な設備が必要となります。手を出すのが難しいドライカーボンですが、京都大学では学生自らが企業様よりアドバイスを頂きながら設備作りからカウル製作の全てを学生の手で行っています。
京都大学のドライカーボンカウルについての詳しい紹介はこちらのページからもどうぞ。

 新しい挑戦 ~伝統産業とのコラボレーション~



 昨年2008年度大会参戦車輌のカウルの製作に当たっては、ドライカーボンを扱う技術にますます磨きをかけながら、塗装にも工夫を凝らしました。例年、カウルの塗装は市販されているスプレー缶で行っていたのですが、昨年度は漆で塗装を施し、さらに京友禅の柄でラインを描く事に挑戦しました。その結果、現代の科学技術のカタチとしての車と、古来から存続する京都の伝統産業との融合が実現されたのです。新しい価値観を創出することをも目指して大会に参加した私達の車輌は会場でも一際異彩を放ち、道行く人々の注目を集める美しいカウルを纏ってコースを走り抜けました。

 塗装工程



 
 
 
    

塗装工程の様子を簡単に説明します。

写真左 今回模様として入れた京友禅の柄は「丸七宝小紋」という江戸時代の紋を使っています。この柄を使用することで、遠目にはライン状に見えるよう視覚的な工夫をしています。型を彫り込んだシート(型紙)はカウルのラインに合わせて型紙職人の野村様に作成していただきました。

写真左下 塗装の前にまず下地処理を行います。当然ながら表面処理がどれだけしっかりできているかが仕上がりの善し悪しを左右するのでここは念入りに行います。

写真右 表面処理ができれば、下塗りをし、本塗りを行います。漆は何度も重ね塗りをする必要があり、重ねることで味のある色を出すことができます。しかし、漆は重ねすぎると乾く時にシワになってしまう為、慎重に塗らなければいけません。今回は製品の表面積が大きかったので塗装にはハケを使わずに、エアーガンで吹きつけを行いました。科学系の塗料には出せない艶が非常に美しいです。
全体が黒く塗れた後、京友禅の柄が入ったシートを貼り、上から青色の漆を吹き付けて塗装の完成となります。漆で青色を出すには調合が難しいそうで、今回の青色は漆職人の佐野様が苦労して作り上げてくださったものです。

塗装も型紙の作成にも長い時間が必要ですが、職人の方々のご協力のおかげで完成させることができました。大変お世話になりました。

 
 
 
 

今後の展望



さて、今回カウルに漆や京友禅の柄を使用した目的は3つあります。
「京都らしさ」という付加価値をマシンに加えること
伝統産業を多くの人に広く知っていただくこと
車と伝統産業を共存させるというアイデアを世の中にアピールすること

 2008年9月に開催されたフォーミュラー大会では、漆塗りのカウルに学生のみならず企業の方にも興味を持っていただき、多くの方々に私たちのテントまで足を運んでいただきました。私達も胸を張って説明することができましたし、良いアピールポイントになったと思います。
 しかし、上記3つのいずれの目的も一朝一夕で達成することは難しいのが現状です。大会が終わってからも大学内で車の展示をしたり、インターネットを通じて体外的にアピールすることは続けており、少しでも目的の達成度を上げられるように努力しております。
 私達の試みが伝統産業の新しいあり方の1つのサンプルとなり、伝統産業についての認識が広く社会に広まることにつながればと思っています。これを読んでいただいた皆様も、この機会に京都に限らず伝統産業に興味を持っていただけたなら幸いです。

 最後になりましたが、車と伝統産業を合わせるという今回の大胆なプロジェクトは、田内設計事務所 田内様のプロデュースにより実現することができました。この場を借りて篤くお礼申し上げます。また、今回私達のわがままを聞いてくださり、ご協力して頂いた漆職人の佐野様、型紙職人の野村様にはこの場を借りて感謝の意を表します。本当にありがとうございました。

2008年度カウル班リーダー
高橋 円

総合プロデュース
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京都伝統漆技術
伝統古法小紋型染